室町後期の公家である山科言継(ときつぐ)の連歌の発句の書留。言継自筆。外題は表紙中央に「発句」と自筆で記し、左下に「拾翠」の壺印を捺す。春16首・夏13首・秋19首・冬19首を部類して記す。全19丁のうち、墨付7丁。各部立ごとに遊紙を残しているのは、さらに書き足して行くためにであろう。各句には日付や連歌会興行の場所などが注記され、詠作事情が知られる。それに拠れば、天文9年(1540)から天正2年(1574)に至る間の発句が記されていることになる。
また、後の部分には、「未出分」として、まだ連歌会などに提出していない、つまり、未だ公にしていない句(腹案、「孕み句」とも)が、やはり春・夏・冬に分けて(秋の句は見えない)書き留められている。
なお、龍門文庫所蔵の他の言継自筆資料と同じく、本書も、書状・詠草・懐紙の写しなどの紙背に書かれている。 |