原装渋引表紙(縦31.5cm×横21.3cm)。外題、直接後筆にて「職源抄」と墨書したものを墨消。前半10丁『受領百官注』、後半目録とも15丁『塵滴問答』。墨有界(界高27.4cm、界幅1.5cm前後)。傍音訓・送り仮名・返点あり。
『受領百官注』には本文と同筆のほか、江戸初期の別筆あり。前半、『受領百官注』、内題なし。尾題「受領百官注書之畢ヌ」。関白からはじめて百官の役割と唐名を説明する。後半、目録題「塵滴問答事」。目録「第一大師等事」から「第卅七弥陀薬師因位事」まであり。
問いは、伊弉伊諾・和歌連歌・仁王・鳥居・囲碁双六・刀杖・舞楽管弦・酒・茶・六地蔵・三界などに及ぶ。尾題「塵滴問答終ヌ」。冒頭に、
| 東海道遠江ノ国ニ新善光寺ノ前ニ茶屋ノ有ケルニ立寄ル処年ニ年齢イ五十余ト覚敷キ老僧号ス(二)白山参詣ト(一)又千駄櫃負タル商人是モノ年齢イ三十余ト見ルカ種ノく有リ(二)問答(一) |
とあって、30余歳の商人と50余歳の老僧との問答が記録されるという形式となっている。最後に、
| 此男髪ヲ切リ名ヲ善滴ト付テ裳モ無シ衣ヲ肩ニ懸ケ給フバ道心深クコソ覚梟リ妙塵房トテ若テハ高野辺ニ学文候也ト名乗テ二人共ニ打連テ此茶屋ヲ罷リ立テ不思議成ル所ニテ行キ合テ茶屋ノ事成レハ老少男女貴賤上下此ノ二人ノ物語ノ問答ヲ耳ヲ崎テ心ヲ静メ聴聞シ候程ニ是ハ只者トハ不レ覚能々承リ傳レハ彼ノ聖ハ弘法大師ノ化現シ給フ也彼ノ商人ハ春日ノ大明神ノ変化シ玉フ也ト承リ加様ニ申者ハ足ノ磨大雲房ト申ス者也余リ不思議ニ□々安記シ置処也ト云云
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とあって、老僧の名は妙塵房、商人は出家して善滴と名乗ったとある。書名「塵滴問答」はこれによる。この問答を記録した者は「足磨大雲房」と記している。群書類従本には「足スリノ大雲ト申ス非人也」に続いて、「正中二年春ノ比ノ事也。」とある。
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