高津柿本神社所蔵資料電子画像集 |
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外題:なし(「五十首和歌」と墨書した包紙に包む) 内題:巻頭に「春日詠五十首和歌」 数量:写本一巻 寸法: 装丁:巻子(軸なし) 表紙:なし 料紙:楮紙 |
巻頭に「春日詠五十首和歌/民部卿藤原為村上」とあり、巻末に「明和五年[自正月朔日/至二月廿日]詠之/後日奉納 為村[五十七歳]」
とある。明和五(1768)年元旦から二月二十日にかけて毎日一首ずつ、計五十首を詠じたものを、後日、この高津柿本神社に奉納したものである
ことが分かる。筆跡は冷泉為村の自筆である。詠者・為村(1712―1774)は江戸時代中期を代表する公家歌人であり、享保六(1721)年に霊元上皇
から古今伝授を受けた。烏丸光栄、三条西公福らにも師事し、また関東の武家を中心に多くの門弟を指導して冷泉門の拡大に大きく貢献した。 この五十首和歌は、部立、歌題共にないが、春、夏、秋、冬、恋、雑の歌で構成される。歌は二行書き。巻頭歌は「高角やあかしの浪の春かけて おなじひかりにたつ霞かな」、巻軸歌は「すゑも猶とをやまどりのしだり尾のながくさかふることの葉の道」。巻軸歌は、『拾遺和歌集』や 『小倉百人一首』にも入集した『万葉集』の人麻呂歌集歌「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を一人かも寝む」(巻十一・2802・或本歌) を本歌取りしたもの。本歌は『歌林良材抄』に「足引の遠山鳥のしだりをのながながし夜を独かもねむ」と掲出される。 解説:奈良女子大学大学院博士後期課程 大石真由香
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