高津柿本神社所蔵資料電子画像集
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八雲神詠口决・和歌三神口决



外題:なし  内題:八雲神詠口决 和歌三神口决
数量:写本一冊  寸法:縦19.5×横27.0cm
装丁:四針袋綴  表紙:金色布地龍文  料紙:
見返し:金泥  丁数:墨付九丁 一面七行
 本文は、@定家の八雲神詠口决相伝起請文、A八雲神詠口决、B和歌三神口决の三部に分かれる。本文はすべて同筆であり、 それぞれの口决の末尾に奥書がある。また、それとは別に、本文末尾に別筆の識語が添えられている。本文は、変体漢文、漢字カナ交じり文、 宣命体が混在する。
 @の日付は「二月九日」のみで年の記載がなく、署名も「定家」とのみ書かれており、宛先は「冷泉権大副殿」である。 藤原定家から吉田兼直に宛てた誓詞に仮託したもの。
 Aは「超大極秘之大事」と題して、八雲神詠すなわちスサノオノミコトの「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を」 の歌に関する「四妙大事」を「字妙」「句妙」「意妙」「始終妙」として説き、さらに「逸妙」を別伝として立て、「初重」から「四重」の 四段階に分けてイザナギ・イザナミの陰陽二神の詠「あなうれしにへやうましをとこにあゐぬ」に関わる秘説を述べる。同筆の奥書に 「文明十六年十二月日/従二位侍従卜部朝臣兼倶」とある。卜部兼倶(1435―1511)は、唯一神道を創唱した室町時代後期の神道家。 「四妙」に関しては早く貞治六(1367)年に著された忌部正通の『神代口訣』にも見え、一条兼良(1402―1481)の『日本書紀纂疏』にも 継承されている。兼倶はそれを継承しながら、独自に「逸妙」へと展開させたものと考えられる。
 Bは「化現之大事」と題して「奥旨至極重位」に置き、住吉三神である底土命(底筒男神)、赤土命(中筒男神)、磐土命(表筒男神)が それぞれ衣通姫、赤人、人丸(柿本人麻呂)の三聖の化現であることを述べる。末尾にはこれが永正六年三月四日の兼倶の相伝であることを 記している。また、その奥に付された西武の奥書によると、本書は師匠の松永貞徳より授けられたもので、それは一条兼遐(1605―1672)から 応山(近衛信尋 1599―1649)を経由して伝えられたものという。松永貞徳(1572―1654)は江戸時代初期の歌人であり貞門俳諧師である。 西武は貞門の俳人。
 さらに奥の別筆の識語には「享保十[乙巳]二月八日石州高角/人丸寺快信坊妙有坊為社/内奉納大願之間伝之畢/源慶安(印)(印)」とある。 これによると本書は『和歌三神伝』にやや後れて、享保十年(1725)二月八日に人丸寺(高津真福寺)の快信坊と妙有坊が和歌を神社に奉納したのを 記念して、金勝(こんぜ)慶安が両僧に伝えたもの。慶安筆であろう。

参考文献:三輪正胤氏『歌学秘伝の研究』(風間書房 平成六年)

解説:奈良女子大学大学院博士後期課程 大石真由香

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