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旧 本 伊 勢 物 語
版本三冊。袋綴。26.9cm×18.6cm。墨付、上巻25丁、中卷31丁、下巻12丁。
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寛永二十年刊の『真字伊勢物語』と同じく、これも漢字ばかりで書かれた真名本の伊勢物語である。建部綾足の手になる。
明和六年(1769)、風月荘左衛門の板行。旧本伊勢物語二冊に考異一冊がついている。綾足は『伊勢物語考異』において「こたび新に彫れる冊子は旧本とて人のもてりし物なり。得て是を読に、そが中には、まさしに写したがへ或はかい落しなど見ゆることいと多し。よて世に真字六条本といふ冊子を引きあわせて、をちこちかうがへとりしものなり」とのべている。本書は『真字伊勢物語』が欠いている二段を持っているが、「昔道奥尓而云々、此一条六条本脱、又諸本多くは波間従の歌の条と、於幾乃居而の歌の条と、次第たがえり」「昔男女乃末代歴受止云々、此条六条本脱」と説明している。
しかし、綾足は、三熊花顛の『続近世畸人伝』において「生涯酔たるか醒たるかしるべからざる人也。古本伊勢物語といふものを印刻せしを、予これはいづこよりとうで給ふものにて、真字伊勢とも異なるは、さだめて伝来あるべしととひしかば、唯微笑してありしは、其胸臆に取りたる也」と記されており、綾足の偽作の可能性が高い。本居宣長も『玉勝間』において、『旧本伊勢物語』の用字法が当時の国学の影響を受けている事を指摘している。