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伊勢物語拾穂抄
版本四冊(巻四・巻五は合一冊)。袋綴。26.8cm×19.6cm。 本 文 翻刻付
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北村季吟(1624〜1705)の著作。
巻四の奥に後水尾院の叡覧に供した旨の、寛文三年(1663)の跋文が載るところから、寛文三年(1663)以前の成立と考えられるが、刊行は遅れて延宝八年(1680)である。
旧注に属する『愚見抄』『肖聞抄』『惟清抄』『闕疑抄』などを取捨選択し、『闕疑抄』とそれを受け継いだ師松永貞徳の説を中心に、巧みに諸注を整理集成しようとしている。本著の本文・傍注・頭注・後注という注釈形態は、従来の単一的な形を打破した新しい注釈形態を確立した点で意義深い。著者である北村季吟は、寛永元年(1624)近江北村の生まれ。十六・七歳の頃から貞室について俳諧を学び、十九歳で貞徳直門となる。貞門俳諧では俳人の教養として古典の知識は必須であり、歌学を中心とした古典に関心が移り、そのため季吟はしばしば門弟相手の講義を行った。そのノートがまとめられ、『土左日記抄』『大和物語抄』『湖月抄』などの注釈書として完成していった。
季吟四十歳前後の成立と考えられる『伊勢物語拾穂抄』もその成果の一つ。板下筆者は息男の湖春である。