画像サイズは平均100K以上あります
添註伊勢物語俚言解
版本二冊。袋綴。27.0cm×19.2cm。墨付、上巻32丁、下巻42丁
|
本書は、歌人、国学者佐佐木弘綱(1828〜1891)が、清水浜臣(1776〜1824)著『伊勢物語添註』(成立年未詳)に、更に校注を施したものである。
序によると、安政の頃(弘綱三十歳頃)に書き上げていたが、支障があって明治十八年(1885)に刊行したという。
清水浜臣は村田春海門の国学者。浜臣の『添註』は、写本のみで伝わり、刊行はされていないようである。伊勢物語の本文の間に□(四角)で括って言葉を補い、通読の便を図ったもので、別に頭注欄を設けている。弘綱はこれに加えて、本文の要所要所に俚言(俗に用いられる語)に和らげた句を傍書し、さらに読み易くして『俚言解』とした。
ただし、40段で、『添註』の本文を退け、『新釈』によって塗籠本の和歌を採用したり、頭注に自説を施すなど、校訂や注に改変の後がみられる。
本書は、古注旧注からの離脱を図った『新釈』や、わかりやすさを配慮した『添註』『伊勢物語箋』(橘守部著)の流れを承けるものであり、現在の口語訳付注釈は、この延長線上にあるといえよう。
なお、巻末に「佐々木弘綱著述目録」が付載されており、その中に『竹取物語俚言解』ほか十一種の「俚言解」を称する書名が挙げられている。