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女 訓 抄 | ||||||
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翻刻文の作成については、本学文学部日本アジア言語 文化学講座学生標敦代さんの協力を得ました。 |
解 説袋綴じ 刊本 題簽「絵入り 女訓抄上之一、二(中之一、二・下之一、二)」3巻6冊 。上の1--18丁、上の2--25丁、中の1--18丁、中の2--15丁、下の1--25丁、下の2--21丁。 絵入り。刊記 万治元(1658)年、婦屋(麩屋)仁兵衛(京都)。作者未詳。婦屋仁 兵衛は京都の書肆で出版活動は、この女訓抄出版以降、宝永2(1705)年まで。
『女訓抄』(じょくんしょう)は、仏教思想による教訓書。近世女訓ものの嚆矢。
草書体の平仮名が多く、細字で記されている点などから習字練習用としてではなく、読み物 として使われたと考えられる。 古写本・古活字本・版本があり、版本として寛永版本 、万治版本が現存。また万治版本には絵入り本が知られているが、本学資料は絵入りの 版。又、序文は欠落。
『日本教科書大系 往来編 第一五巻 女子用』(講談社、1973年)には寛永19年 版の翻刻が、マイクロフィルム版『往来物分類集成『女子往来用編』(大空社、1994 年)には、寛永16(1639)年版の古活字本と、上記の寛永19年版の影印版が収録されて いる。また異本を含めた書誌的紹介をはじめ、内容についても、青山忠一「女訓抄」( 『仮名草紙女訓文芸の研究』桜楓社、1982年)に詳しく、古写本による序文の翻刻あり 。
「序」では、老年にして娘を得たことで、娘のために訓戒=女訓を残すという執筆動機 が記される。こうした導入の型は以後の教訓書の定型。娘は、仏教の考え方で言う五種 のさわり=五障と儒教でいう三従(父、夫、子に従う)をそなへた身であるので、今の うちに教訓を残したい、とする。
内容的には一〇の項目に分けられ、仏教説話をはじめ 和漢の典籍を挿入して文飾を加え文芸的な要素をちりばめながら、実生活に対する心構 えを説く。江戸時代の女訓書は概ね、五倫五常を説き、陰陽五行によって世界を説明し ようとする朱子学・儒学の影響が圧倒的であるが、本書は、仏教的須弥山思想による世 界観を主張する。平易な教訓書の類ではない。構成は以下の通り。巻上;一、四たう八く(四倒八苦)の事(1〜3)、二、五しやう三しゆ(五障三従)の 事(1〜33)
巻中;三、けいし(継嗣)を顧る事(1〜6)、四、しようしうふち(諸衆扶持)の事( 1 〜8)、五、しんたい(身体)をたもつべき事、 六、しゆくん(主君)につかふへき事(1〜6)、七、とも(友)にましはるべき 事(1〜4)
巻下;八、げいのふ(芸能)あるべき事(1〜30)、九、こけ(後家)のふるまひの事 (1〜3) 、一〇、ごしょうせんしょ(後生善処)の事(1〜7)冒頭・後尾に「四倒八苦」や「後生善処」といった中世以来の仏教倫理を配す他、各章 にわたって仏教色が濃厚であり、近世前期の教訓物の特徴を示す。巻上では常・楽・我 ・浄の四顛倒(誤解)から説きおこし、日本・中国・インドの説話、貞女の事例を引用 して、女の五障を説き三従七去をさとす。中巻以降は日常生活の処し方、健康上の注意 などに及んで教養書、手引き書の要素が盛り込まれ、下巻の「芸能」では和歌・詩歌・ 琵琶・詩・和歌・連歌・長短歌・伊勢物語・いろは歌・琵琶・琴などの手習いや諸芸の 基礎知識の他、仏教の考え方に沿って、須弥山蒼海から三千世界の説明、日月運行、干 支、暦、五節句、年中行事といった諸事項の知識が説明されている。
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