奈良女子大学学術情報センター
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本 朝 列 女 傳

巻之一 巻之二 巻之三 巻之四 巻之五
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   解 説
 内題・自序首には「全像本朝古今列女伝」とあるが,著者の命名にか かる本来の書名は「本朝列女伝」である(自序参照)。10巻10冊,寛文 8(1668)年刊。この現資料はその後印本(刊記参照)。この後印本では, もと巻末にあった後序が序文の次に移されており,後序の末尾にはもと の刊記(「寛文第八歳次戊申仲春上澣/勝村治右衛門」)がそのまま残 されている。
 著者は安部弘忠(1612〜1678)。伊勢山田の人。初め与村氏,一時黒 沢氏,のち安部氏(安倍とも。修姓は安)。名は弘忠,字は有隣,号は 石斎など。江戸に出て林羅山に学び,のち松江藩儒となった(『国書人 名辞典』)。
 本書は, 明暦元(1655)年の自序, 明暦3(1657)年の永田善斎(1578〜 1664,紀州藩儒)序,寛文3(1663)年の北山散人(野間省軒〔1608〜1676〕 か?)序を冠し,明暦元年の与村弘正(著者の兄。伊勢神宮の神官)の 後序および李全直(1617〜1682,号は梅渓,紀州藩儒)の後序を付す。
 自序・凡例によると,著者は,我が邦に貞女節婦の伝がないことをう れえて,国史を読み諸記録を博捜して,ほぼ漢の劉向の『列女伝』にな らい,本書を編んだという。 構成は,巻1后妃伝,巻2夫人伝,巻3孺人 伝,巻4婦人伝,巻5妻女伝,巻6妾女伝,巻7妓女伝,巻8処女伝,巻9奇 女伝,巻10神女伝。本伝181人,附録36人,通計217人。全編漢文で,頌 と図を付す。ときに割注のかたちで著者の評言が加えられている。
 劉向『列女伝』の近世日本における受容という観点から言うと,承応 2(1653)年には和刻本が刊行されており,明暦元(1655)年頃にはこれを 和訳した北村季吟の『仮名列女伝』が刊行されている。『仮名列女伝』 の刊行とほぼ同じ時期に執筆されやや遅れて刊行された『本朝列女伝』 も,近世初頭のこのような動向のなかから成立してきた書物であると言 える。寛文元(1661)年に刊行された『本朝女鑑』との内容面での重なり なども指摘されている。ただし,『本朝列女伝』は,全編漢文で書かれ ているという点で,この頃以後に数多く刊行された仮名書きの女訓書と はやや性格を異にしているというべきであろう。
なお、『本朝列女伝』は、『江戸時代女性文庫』第85巻(大空社,1998 年,増田淑美解題)に影印されており,『日本教育文庫』孝義篇下(日 本図書センタ−,1977年)に翻刻されている。また,『(マイクロフィ ルム版)往来物分類集成 女子用往来編』(雄松堂フィルム出版)に も収められている。

神戸大学国際文化学部講師 宇野田尚哉

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