解 説
題簽「民家祝言婚礼仕用罌粟袋 鶴亀」、二巻二冊。序題は「当世民用婚礼仕用罌粟袋
」。小型の横本の体裁をとった江戸時代の代表的な婚礼指南書。刊記は寛延3(1750)
年。序文名は、皇都、白水選集とある。本学所蔵のものは書肆名不記。なお『江戸時代
女性文庫』28(影印版、大空社, 1995)に小泉吉永 の詳細な解題があり、書肆は江戸
・大坂・京都の四書肆であること、作者は版元である京都の和泉屋伝兵衛ではないかと
推測している。
本書の構成は、序文、凡例、目録(上下)、本文からなる。指南書であるところから、
豊富な挿絵が入っているが、二丁見開きを使って、部屋全体の見取り図・配置図なども
掲載され、結納・婚姻の儀式の段取りが具体的にイメージできるように工夫されている
。下巻の5〜60丁は、婚礼座敷の飾り方、御厨子・黒棚飾りなどの図解中心。
序文・凡例によれば、特別の身分の高い階層ではなく、「農工商」を対象にしたとある
が、実際は京都の豪商層であったと思われる。内容は、結納・婚礼準備・婚礼道具の運
び入れ、輿渡し、三三九度・婿入りの式などの当日の式次第、あとにぎわし・里帰りな
ど婚礼後までの作法を絵入りで実務的に記したもの。実際には地域差・階層の差はあり
、この指南書そのままに執り行う家格は多くはなかったと考えられるが婚姻関係だけに
限定し、モデルケースを叙述した資料として貴重である。