奈良女子大学学術情報センター
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中将姫一代記

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  翻刻文の作成については、本学文学部学生、辻野慶子さん、  
  藤恵美子さん、椰木里美さんの協力を得ました。       
解 説

 題簽「中将姫一代記」(ちゅうじょうひめいちだいき)。5巻5冊。絵入の読本。刊記は 寛政13(1801)年。権河道人による序文。書肆は、須原茂兵衛(江戸)・大野木市兵衛 (大坂)・脇坂僊治郎(京都)・吉田新兵衛(京都)。「中将姫行状記」(享保15-173 0)を改題したもの。
 本書は、序文、総目録、本文から構成されている。中世で一般的であった継子の受難と 救済を主題とする仏教説話の系譜を引いている。当麻寺の『当麻曼荼羅』の発願者とさ れる禅尼、元中将姫の、747(天平19)年の生誕から775(宝亀6)年の死まで年代をお っての一代記。随所に仏教説話が挿入されている。大筋を記しておくと、豊成卿とその 北の方紫の前が長谷寺に祈願して授かった子中将姫は、実母の死後、実子に家を継がせ ようとする継母照夜御前に疎まれる。何度か命を狙われた後、奉行の武士松井嘉当太と その妻は自分の娘を身代わりにして姫を助けかくまった。やがて狩りに訪れた父と雲雀 山中で父と再会を果たし、后にと望まれるがこの世の栄耀栄華に無常を感じた姫は、出 奔して17才で仏門に入り、当麻寺で法如比丘尼として曼荼羅を発願し、その人生を捧 げるというものである。一巻に2〜3丁の挿し絵入が挿入され、序文でも仮名文によっ て童にもわかるような説話とした、と説明がある。
 なお、中将姫の説話は歌舞伎・浄瑠璃などでも主題化され、人気のあったモチーフの一 つであり、ことに姫と父豊成との再会は劇化される場面の一つである。

          立命館大学講師  長 志珠絵

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