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令和4年度入学宣誓式 奈良国立大学機構 奈良女子大学新入生への歓迎の辞


 この度、奈良女子大学に入学された新入生の皆さん。奈良女子大学と奈良教育大学が属する奈良国立大学機構の理事長として、まず、一人一人に心からの歓迎の意を表
します。


<かけがえの無い大学時代・大学院時代を主体的に過ごして欲しい>

 小学校・中学・高校を経て、学校生活の最終段階として大学生活や大学院生活を奈良の地で送ることになった皆さん。この数年間を、人生の中の掛け替えのない時間と
して過ごしてもらいたいと心から願っています。皆さんの学びと日々の暮らしが、真に充実したものになるよう、二つの大学の教職員とともに、理事長として、できる限
りの努力をしますが、大学での学びでは、教員が提供する教育よりも、学生自らによる学び、学生同士の学び合い、学生と教員の間の対話や学び合いが、とても重要であ
ることも認識して下さい。従って、学生の皆さんが、学びの姿勢を高め、その喜びを知ることができるかどうかが、大学全体の学びと研究の質を決める鍵になります。大
学では、受益者の立場に甘んじることなく、学びの場を作っている中心的な構成員として、これからの日々を送るように、心から願っています。


<自分の持ち味を強め、奈良の環境を活かした学びを進めて欲しい>

 大学への入学当初から、自分自身を十分に知り、人生の目標を固めている人は、さほど多くないと考えています。大学は、専門性を深める場ですが、それに加え、時代
の流れの中で、また、広い世界の中で、自分がどんな人生を歩んでいくべきかについて考えを深め、方向性を固めていく思索の場でもあります。そうした模索では、直ぐ
に答えが見つかりませせんが、世界と自分との関係の中で、自分の持ち味を探し出して、強めながら、未来に進むべき道を探り、一歩ずつ歩みを進めてほしいと願ってい
ます。奈良女子大学と奈良教育大学は、高等師範学校や師範学校を母体とする大学なので、「学びとは何か。人を育てるとは何か」との問題意識を共有し、小規模なが
ら、人文・社会科学系、基礎・応用科学系、芸術系などもカバーする総合大学です。従って、専門を深めるだけでなく、他の分野の先生や友人との対話や学び合いを進
め、幅広い視野や豊かな人間性を培うのに絶好の場です。さらに、法人統合を機に、両大学の協力の強化に加えて、奈良地域の教育・研究・文化機関と連携し、新たな学
びの仕組み「奈良カレッジズ」を発足させつつあります。奈良が持つ豊かな歴史遺産と自然にも十分に触れ合うことで、恵まれた学びの環境をフルに活かすよう願ってい
ます。


<国立大学で学べることの有難さを認識し、感謝の念を持って欲しい>

 我が国では5割強の若者が大学に進み、学びの時を過ごしますが、5割弱は直接か専門学校経由で就職し、職業人として社会を支えています。戦前の大学進学率は1割弱
でしたが、近年、政府や家族による支援が充実したお蔭で、5割を越えています。この大学生の中で2割だけは、国や自治体が支援する国公立大学で学びますが、8割は公
的支援が少ない、授業料の高い私立大学で学んでいます。これまでの努力の結果、国立大学に合格された皆さんには、敬意を表しますが、同時に、国、即ち、納税者から
供されている多大な支援の存在のお蔭で、大学が運営されていることを認識し、多くの支援者への感謝の念を深めるとともに、社会に貢献する意欲と能力を高めてもらう
よう望んでいます。なお、カレル大学は、約700年前に誕生したチェコ第一の国立大学ですが、卒業後に社会に貢献する誓約書を出すことが入学の条件になっているとの
話を聞いています。


<結びの言葉>

  教育学者・哲学者として著名なジョン・デューイは、「大学生活は、人生への準備の期間ではなく、人生そのものである」との言葉を残しています。うっかりすると、
高校生活は大学進学への準備期間であり、大学生活は就職への準備期間であると 思いがちですが、奈良での数年間が、人生の中でかけがえのない時代であることを認識
し、素晴らしい日々を送ることを、心から祈念しています。


奈良国立大学機構
理事長 榊 裕之