高津柿本神社所蔵資料電子画像集
学術情報センター 電子画像 奈良地域関連資料

霊元天皇他奉納和歌五十首



外題:題箋に「霊元上皇宸翰一葉以下五十葉」と墨書  内題:なし
数量:一帖  寸法:縦41.3×横18.0cm(各短冊縦36.6×横5.8p)
装丁:折本  表紙:薄萌黄布地花唐草文  料紙:鳥の子(短冊:打曇)
見返し:金砂子  丁数:全七丁(一面に短冊二枚、全五十枚)
 堂上歌人の詠んだ法楽和歌の短冊帖六帖のうちの一帖で、重要美術品。新しく折本に仕立てられている。
 巻軸の短冊(祝言/中院通躬)の裏に「御奉納/享保八年三月十八日[石見国/柿本社/御法楽]」とある。序跋等はないが、享保八(1723)年 三月十八日に行われた柿本人麻呂一千年忌に際して奉納された五十首和歌の短冊である。各短冊には綴穴があり、本来は短冊五十枚を束ね紙縒で綴じて 奉納したものであることが分かる。
 同じ時、播磨国人丸神社(兵庫県明石市人丸町)にも奉納和歌五十首が奉納されたことが島根大学附属図書館所蔵『人麿御奉納百首和歌』 (内題「[石見国/播磨国]人麿社千年忌御法楽和歌」)などの資料によって知られるが、明石の人丸神社あるいは同じく明石にある月照寺にも 現存しない。
 歌は春、夏、秋、冬、恋、雑の順に配置され、短冊の正式な書式に則った各作者の自筆短冊。ただしすべての短冊を通じて題は一筆である。巻頭歌は 「立春/この道の光もそひてのどけさを世にしきしまの春はきにけり」で、霊元天皇(1654―1732)の御製。二首目「竹鶯」詠の「阿計麿」は霊元天皇 王子職仁親王(1713―1769)。巻軸歌は「祝言/此ときにあへるを神もよろこひにまもらむすゑは千とせ萬代/通躬」とあり、柿本人麻呂一千年忌を 催したことへの寿ぎとなっている。なお、上記島根大学附属図書館所蔵資料によれば、「題者」は「盧橘」詠の藤谷為信である。他に武者小路実陰、 飛鳥井雅香、近衛家久、烏丸光栄等の名が見える。

参考文献:芦田耕一「島根大学附属図書館蔵『人麿御奉納百首和歌』―紹介と翻刻―」『山陰地域研究(伝統文化)』第八号 1992年3月

解説:奈良女子大学大学院博士後期課程 大石真由香

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