高津柿本神社所蔵資料電子画像集
学術情報センター 電子画像 奈良地域関連資料

桃園天皇他奉納和歌五十首



外題:題箋に「桃園天皇宸翰三葉以下五十葉」と墨書  内題:なし
数量:一帖  寸法:縦41.0×横18.0cm(各短冊縦36.6×横6.2p)
装丁:折本  表紙:薄青布地流水文  料紙:鳥の子(短冊:打曇)
見返し:金砂子  丁数:全七丁(一面に短冊二枚、全五十枚)
 堂上歌人の詠んだ法楽和歌の短冊帖六帖のうちの一帖で、重要美術品。新しく折本に仕立てられている。
 巻軸の短冊(寄神祝/柳原光綱)の裏に「御奉納/宝暦十年五月十八日[石見国/柿本社/御法楽]」とあり、宝暦十(1760)年五月十八日に 奉納されたものであることが分かる。
 歌は春、夏、秋、冬、恋、雑の順に配置され、短冊の正式な書式に則った各作者の自筆短冊。ただしすべての短冊を通じて題は一筆である。 桃園天皇(1741―1762)の御製歌は巻頭歌「早春霞/春きぬといはねどけさはいはみのやたかつの山のかすむにぞしる」を含む三首。この巻頭歌は、 『万葉集』所収の人麻呂作歌「石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹見つらむか」(巻二・132)、および『古今和歌集』所収の「春来ぬと 人は言へどもうぐひすの鳴かぬかぎりはあらじとぞ思ふ」(春・11・壬生忠岑)の二首を本歌取りしたものである。巻軸歌は「寄神祝/うごきなく たかつの山にいく千とせ君がみちをば神はまもらむ/光綱」。「うごき」なき「山」にことよせて千歳萬代を祝うのは、拾遺集の神楽歌や賀歌に 詠まれて以来の典型である。他、家仁親王、職仁親王、冷泉為村、近衛内前、飛鳥井雅香等の名が見える。

参考文献:芦田耕一「柿本神社(益田市)蔵『堂上御奉納和歌』―紹介と翻刻―」『山陰地域研究(伝統文化)』第九号 1993年3月

解説:奈良女子大学大学院博士後期課程 大石真由香

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